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ベトナムのホアビン省で、Appleの助成対象団体であるGravity Waterが131の学校に革新的な雨水貯留システムを設置しています。
環境 2024 年 5 月 21 日
北ベトナムの地方部、ホアビン省にあるダバック地区周辺を蛇行するホアビン湖は、穏やかで静かです。その岸に沿って農業を営む家族が点在し、この広い水域と共存しています。彼らの暮らしは、エビや淡水魚など湖がもたらす資源に依存しており、特に乾季には、上の山地から流れてくる自然河川の水が十分でないと、湖自体の水も不足します。
一見、水が非常に豊かでとても美しい場所ですが、水が安全ではないことを多くの地元民が認識するようになりました。12世紀にはベトナムに移り住んでいた少数民族であるザオ族のいくつかの家族では、水の神は人が水を大切にしないと人に良くしてくれない、という信仰が世代を超えて伝えられています。
「私たちが水を汚したら、水の神は私たちに仕打ちをなさるでしょう」と、地元のVay Nua初等中等民族寄宿学校の管理者であるTrần Thị Lan Hươngは言います。息子のMàn Xuân Phûcは、その学校に通う2年生です。「だから、私たちは水源をきれいに保つよう努力します」
Vay Nua初等中等民族寄宿学校で、Gravity Waterのシステムで作られた水を飲んでいる1人の生徒。
ベトナムのホアビンにあるVay Nua初等中等民族寄宿学校で、Gravity Waterは、湧水と収集した雨水のどちらから水を供給するべきかを示す自動化されたスマートメーターシステムを通じて、すべての生徒が一年を通じてきれいな水にアクセスできる状況を確保しました。
多くの場合、水質の維持は湖周辺の地域コミュニティの手には負えません。適切にろ過しなければ、損傷した井戸から汲み上げられた地下水はカルシウムやその他の金属で汚染されており、山を流れてくる川は、そのまま山を下っていく前に、田への灌漑や牛の飼育といった日々の農畜産業の慣行で、迂回したり汚れたりします。また、乾季には川の流れがゆっくりになり、したたる程度にしか流れなくなることがあります。
Hươngの息子が通う学校では、グローバルクリーンウォーター組織のGravity Waterが、教師と生徒たち(その多くは月曜から土曜まで学校の寄宿舎で生活しています)に気候レジリエンスを備えた清浄な水源を提供するため、革新的な雨水貯留システムを設置しました。2023年にAppleは、ベトナム北部の131の学校に安全で清浄な水を提供するため、Gravity Waterに助成金を供与しました。この連携は、世界中のサプライチェーンで水の利用可能性、水質、水へのアクセスのしやすさの問題に対処するためのAppleの水に関する戦略と関連しています。ホアビン省のような地域で水へのアクセス、衛生的なトイレの設置、衛生習慣("WASH")を前進させるための実証されたテクノロジーを応用していることは、この取り組みの幅広さを示しています。
人間中心設計のアプローチを使って、Gravity Waterは各学校と連携して固有の課題を判断し、最適なソリューションを構築します。このアプローチにより、学校は、使い慣れた既存の貯水システムとGravity Waterの介在によって提供される自動化を頼りにし、全面的に主体性を持つことができます。
「毎週、私たちは5件の設置を行っており、行く学校ごとに異なるのでワクワクします」と、Gravity Waterのホアビン省プロジェクトマネージャーである、同省育ちのPhan Viet Dungは述べています。「輸送も、学校間の距離も、インフラの状況も非常に様々です。ツールが不足している学校もあれば、水の供給が不安定な学校もあります。私たちは、水源が安定している時も不安定な時も、学校では常にきれいな水が利用できるという状況を確保する必要があります」
ヘルメットを着用し、屋外で花を背景に立っているPhan Viet Dungのポートレート。
Phan Viet Dungは、Gravity Waterのホアビン省プロジェクトマネージャーです。同省で育ち、子どもの頃に地元の水路で未処理の水を飲んで具合が悪くなったことがあるDungは、水資源管理の仕事をすることを決めました。彼がGravity Waterに加わることになった経緯、また、自身の地元の学校にきれいな水を提供することに取り組む理由についてお聞きください。
亜熱帯モンスーン気候に分類されるホアビンには、明確に区別される2つの季節があります。通常10月から4月の間に1か月から2か月続く乾季のピークに、この地域は厳しい干ばつに直面します。夏の数か月には大雨が降り、総雨量が約1,100mmを超える年もあります。同じ亜熱帯に位置する世界で最も人口が密集したあらゆる場所で見られるように、雨は、自然にとって、また生物が生きていくために必要であると同時に、恐ろしいものでもあります。最も影響を受けやすいコミュニティでは大洪水と地滑りの頻度が増し、利用可能な水資源がさらに汚染されます。しかしGravity Waterは、大雨を気候脅威だとする認識を、最適なソリューションの一つだという認識に変えたいと考えています。
「雨水には、水を最も必要とする人の水アクセスを本当に大きく変える力がある、というのが私たちの信条です」と、2016年に組織を創設したGravity Waterのエグゼクティブディレクター、Danny Wright氏は述べています。「雨水貯留はベトナムにとって新しいことではなく、世界で最も古くからあるテクノロジーの一つです。竹を半分に切って屋根から様々なタンクに雨を集めている学校に行ったことがあります。私たちには、このような地方コミュニティで私たちのテクノロジーを拡大し変化を起こす非常に大きな機会があります」
Hiền Lương初等中等学校の屋外にある蛇口付きの大きな手洗い場で、1人の生徒が手を洗っている様子。
Hiền Lương初等中等学校では、生徒たちが看護師や教師から水の安全と個人の衛生習慣について学んでいます。
耐候性のある大型の貯水タンクを一連のスマートメーターに接続して地下水使用のレベルと降水から収集したものをモニタリングすることによって、Gravity Waterは、学校が年間を通じて安定した水資源を確保できるようにしています。このシステムは完全に自動化されており、学校の厨房、トイレ、そして生徒たちがシャワーを使ったり洗濯をしたりする寮に、どのタイミングでどの水源から水を供給するかを水位センサーによって判断します。チームはまた、学校の各月の水消費量をモニタリングする方法について、学校管理者へのトレーニングを行っています。教師たちはそのモニタリングを一歩進めて教室に取り入れ、生徒の日々の授業や勉強以外の活動の中で、優れたウォータースチュワードシップと衛生習慣を具現化しています。
「ここには、水の適切な使い方について子どもたちに教えるべきセッションがたくさんあります」と、Vay Nuaの教頭であるHà Thị Dựは言います。「生徒たちはここで生活しているので、きれいな水を手にするには時間と労力がかかることを学べます」
「私たち生徒は、一人ひとりが自分たちの水供給に責任を持つ必要があります」と、Vay Nuaの7年生(中学2年)のBàn Thiên Anhは話しています。「今は乾季なので、川からの水が十分ではありません。時々、トイレを掃除するための水が足りないことがあるので、私たちは水を効率的に使う方法を学ばなければなりません。例えば、喉が渇いた時だけ水を汲み、それを飲みきらなければなりません。間違った目的で水を無駄遣いするべきではありません」
1人の生徒がホワイトボードに書き、仲間の生徒と大人がそれを見ている様子。
Bàn Thiên AnhはVay Nuaの7年生(中学2年)で、好きな教科は数学だと言います。Anhは、新しいGravity Waterのシステムが湧水と貯めた雨水の使用量をモニタリングするのにどう役立つかを示すトレーニングの中で、降水量と水の使用量の関係を表す折れ線グラフを描いています。
ホアビン湖のほとりにあるHiền Lương初等中等学校は、Gravity Waterの別のシステムが設置されたばかりで、ここでHà Hồng Liênは、生徒たちが授業の合間の15分休憩に行う朝の運動ルーティンを指導しています。Liênは学校の看護師として、子どもたちの健康とウェルネスを担当しています。
「子どもたちはいつも楽しくて、エネルギーにあふれています」とLiênは言います。「私は毎年、自分の体を大切にする方法と良い衛生状態を維持する方法を子どもたちに教えるプログラムを実施します。ただ、休憩時間に多くの生徒がいて、その生徒たちが遊べば喉が渇きます。Gravity Waterが入る前、私は、水質に関して自分の健康とここにいる子どもたちのことがとても心配でした」
「教師も水を慎重に使わなければなりません」と、Liênは続けます。「水を使って野菜を洗ったあとは、食器洗いや別の用途にその水を使います。確実に水を再利用するためにです」
「私たちは大人なので、自分たちの安全、健康、環境の関係性を認識しています」と、Hiền Lươngの校長であるPhạm Thiên Namは述べています。「ベトナム語に、食べ物は加熱して食べ、水は沸かして飲むという言い習わしがあります。私たちは、子どもたちが同じことを学び、知識を持つだけではなく自分の安全を保てるようにもなってほしいと思っています」
学校でも家庭でも、ホアビン各所のコミュニティでは飲料水の利用に高い費用がかかる場合があり、ホアビンの70パーセントに、1日あたりの収入が4米ドル未満で、ボトル入り飲料水や家庭用ろ過システムを購入できない少数民族が住んでいます。激しいモンスーンの時期に雨水を貯留するのは、自然に根ざしてコスト効率良くそのギャップを埋める一つの方法です。
Hiền Lương初等中等学校の校長であるPhạm Thiên Namのポートレート。
Phạm Thiên NamはHiền Lương初等中等学校の校長で、生徒たちに、安全性、健康、環境の関係性を示す実践的な授業を行っています。彼は、Gravity Waterの新しいシステムを使えるように、また教室で水の安全性に関する授業を実施できるように教職員を養成することを嬉しく思っています。
「Gravity Waterのタンクと学校のタンクを満たす水を増やせるように、デメリットをメリットに変えます」と、Gravity Waterのベトナム国内責任者であるChu Thanh Hoaは述べています。
Gravity Waterは、学校や最も影響を受けやすいコミュニティのための気候レジリエンスを備えたソリューションとしてその雨水貯留テクノロジーを拡大するため、ホアビンだけでなく世界中でプロジェクトを展開しています。ネパールでは、そのシステムによって、カトマンズ渓谷の60以上のコミュニティに清浄な水へのアクセスを提供しています。台湾の台北では、この組織は48の学校と都市が雨水を利用して運営するのを支援しています。マレーシアでは、Gravity Waterのテクノロジーがさらに50の学校に安全な飲料水へのアクセスを提供しています。そしてメキシコでは、都市、地方、学校の雨水システムを構築する地元の雨水貯留企業であるIsla Urbanaと提携しています。Gravity Waterはこれらのプロジェクトそれぞれでリアルタイムデータを収集し、影響度の評価とシステム効率のモニタリングを行っています。
Gravity Waterのベストを着て屋外に立っているChu Thanh Hoaのポートレート。
Chu Thanh HoaはGravity Waterのベトナム国内責任者です。Gravity Waterが大雨というデメリットを清浄な水というメリットにどう変えることができるのか、Hoaの説明をお聞きください。
Gravity Waterは、2030年までに、学校、公共インフラ、さらに家庭での様々なプロジェクトやパートナーシップを通じて、100万の建造物に安全できれいな水をもたらす計画です。厳しい気象現象が続き、先進国でも途上国でもますます多くの人が影響を受ける中、この組織はコミュニティがその環境とのつながりを維持する未来について前向きに考えています。
「気候レジリエンスは、人々の関わり合いや天然資源についての理解を強化します」とWright氏は述べています。「次世代の生徒やこの地球を受け継ぐ人々にとって、水の節約の大切さを理解することは極めて重要です。私たちは、この教育プログラムを提供して、子どもたちが実際に自分たちの水使用を目にし、雨水貯留を目にし、それに期待感を持てるよう支援できることを本当に嬉しく思います。また、それが行動を変えることになると思います。子どもたちが手を洗いながら『ねえ、この蛇口を閉めたら明日はその線が下がるかもしれないよ』と言うかもしれませんから。それこそが、私たちが本当に願っていることです。つまり、環境とより良い関係を持つのに役立つソリューションを作り出す方法について、批判的思考を促すことです」
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